特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律 |
(中略) ○小沢委員長 次に、田島一成君。 ○田島(一)委員 鮫島委員に引き続きまして、本法案に対して質問させていただきます。 いきなりですけれども、まず冒頭、外国産のカブトムシ、クワガタムシについての対応をお聞かせいただきたいと思います。 先ほど鮫島委員の指摘もありましたとおり、実はこの外国産のカブト、クワガタムシ、平成十一年に農水省によって輸入が認可されたものでありますけれども、このところ、もうけた違いにふえております。トラフィックイーストアジアジャパンというところが平成十四年に公表した「外国産カブトムシ・クワガタムシの市場調査」によれば、平成十三年には約六十八万個体の外国産カブトムシ、クワガタムシというのが我が国に輸入をされています。 大臣、ちょっと、これは御存じでしょうか。こんなカードがあるんですけれども、ごらんになられたことはありますでしょうか。実はこれは、今小学生の中で大ブームの「ムシキング」というカードなんですね。子どもたちは、実は、このカードを一枚百円で買って、大手のスーパーなんかにあるゲームセンターの機械に通して、バーチャルな戦いをするという非常にブレークしているゲームなんですけれども、いわゆるこれは外国産のカブトムシ、クワガタムシが全部かいてあるんですね。 ある意味では、そういう外国の生態系を勉強するいい遊びだというふうにとらえるかもしれませんが、実はこのゲーム機の隣でその外国産のカブトムシ、クワガタムシというのが売られているんですね。今、子どもたちに一番人気のあるヘラクレスオオカブトに至っては、一対、ペアで実は一万五千円以上の値段がついているんですが、当然、このゲームに夢中になった子供は親に買ってくれ、買ってくれとせがんでおります。 しかしながら、その子どもたちが、このブームが過ぎ去って、カブトムシをではどういうふうに扱っているのか。そのまま命を召されていくようであれば問題はないんですが、万が一これが野外に放出されたりすると、とんでもないことになるのではないかと危惧しております。 平成十四年の五月末から六月初旬にかけて、神奈川県の藤沢市の雑木林で、スマトラオオヒラタクワガタの雄が相次いで見つかったケースが報告されています。さらに、国立環境研究所では、DNA分析により、国内産と外国産のヒラタクワガタの交雑種というのも確認をされています。 こういうことを考えると、この外国産のカブト、クワガタムシの影響というのはすごく軽視できないというふうに思うんですけれども、本法案ではこの外国産のカブト、クワガタムシをどのように扱おうと考えていらっしゃるのか。それと、この法案の中では、特定外来生物種の指定といった具体的な内容は、基本方針あるいは閣議決定に先送りされていまして、法律の実体というものが非常に見えにくい内容であります。あわせて、現在検討しておられる特定外来生物の指定種及び基本方針を具体的に開示していただけませんでしょうか。 ○小池国務大臣 まず、カブトムシとかクワガタとか、私は余り好きな方ではないんですけれども、特定外来生物や未判定外来生物に指定するかどうかについては、今後、生態系への影響について専門家の意見を聴取いたしまして、さらに情報収集した上で、政省令の指定に際して具体的に検討する、こういう段取りとなっております。 今、スマトラヒラタクワガタとかいろいろ出てまいりましたけれども、国環研、国立環境研究所の方でもいろいろと実験をしておりまして、インドネシア産のスマトラヒラタクワガタと日本産ヒラタクワガタの間で交雑した個体が生まれるということもわかっておりますし、また、外国産ヒラタクワガタと国産ヒラタクワガタ、その交雑個体にも繁殖能力があるということでございますので、御指摘のように、外国種が入ってくると、それによってまた新たな個体が生まれてくるということになろうかと思います。いずれにいたしましても、政省令の指定に際して具体的に検討させていただきます。 〔委員長退席、長浜委員長代理着席〕 ○田島(一)委員 あくまで、これを認可しているのは農水省だというところにやはり非常に問題があろうかと私は思います。どうぞ、環境省でありますから、厳しい目で見ていっていただきたい、そのことをぜひお願いをしたいと思います。 次に、質問を変えますが、実は先日、五月十八日の朝日新聞の夕刊で、環境省がペット店の全国調査をしたという記事が掲載されていました。全国のペットショップ約三百七十店からの調査回答で、ちょっとこれも、千件お願いしたのに三百七十店でえらい少ないなと随分思ったんです。裏に何かうさん臭いのがあるんじゃないかというような疑問も持ちましたわけですが、これら全国のペットショップ調査の中で、外来生物の販売状況、そして同じく、ペットショップとしてインターネットでやっているネットショップの実態調査について、どのような調査結果が出たのか、お示しをいただけますでしょうか。 ○小池国務大臣 この朝日新聞の方に掲載されましたペット店の全国調査ということは、これは動物愛護法の関係でどのような実態なのかということが主目的で調査をしておりまして、ただ、特定外来生物について、飼育等の許可条件で報告を義務づけるなどのことによりまして、国内での流通を的確に把握をしてまいりたい、このようには考えております。 そして、外来生物の流通実態については現時点ではまだ十分な把握はできていないのですけれども、最近、多種多様な外国産の生物が販売されている、先ほども例がございましたけれども、こういったことについては承知をいたしているところでございまして、ですから、今回のは動物愛護法の関係での実態調査、それとまた別に、実態把握のための事例調査に平成十五年度から着手をいたしているところでございます。 今御審議いただいておりますこの法案の施行がされましてから、特定外来生物に限らず外来生物の国内流通の状況全般について一層の把握に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。 〔長浜委員長代理退席、委員長着席〕 ○田島(一)委員 せっかくこういう外来種の法案が出ているときですから、環境省ももう少しこういうところにも気を配って、せっかくやられるアンケートですから、こういう状況をやはりきちっと把握して、本当はこの法案成立に向けての材料として使われていればよかったのにな、私だったらそうするのになというふうに思ったわけであります。 しかも、最近はネット販売というのは、それこそ届け出義務というものがつかめておらず、実態把握が多分できていないと思います。それだけに、こういったインターネットでの販売をしている業者に対してどのような取り締まりを、これから特定外来生物の取り締まりを効果的に行うことができるのか、非常に疑問に思うわけですけれども、もしお考えがあるようでしたらお聞かせをいただきたいと思います。 ○小野寺政府参考人 インターネット販売は特に把握と規制が難しい分野だというふうに思っています。それも含めて、昨年度から外来種を目的とした調査に着手したところでありますし、法律の規制と並行して、実態把握と、その抑制手法で何か効果的なものがないか、検討していきたいと思っております。 ○田島(一)委員 ぜひスピードを上げてやっていただくようにお願いをしたいと思います。 次に、リスク評価の期間等についての質問に移らせていただきます。 本法案では、未判定外来生物が生態系に被害を及ぼすおそれがあるかどうかを判定する期間を最大で六カ月というふうにしております。 判定は慎重に行う必要があり、判定期間は六カ月以内と特に限定せず、ある程度の判定期間の延長をできる仕組みというものを取り入れるなど、柔軟な対応をすべきだというふうに私ども考えます。 どうして判定期間を六カ月と限定されたのか、参議院での議論もありましたけれども、改めて御答弁をお願いします。 ○加藤副大臣 本法案は、生態系等に係る被害を防止するための厳格な規制を課するものでありまして、本法の保護法益以外の公益や私権、そのバランスを慎重に図る必要があると思います。 こういった基本的な認識と同時に、今御指摘の点になってくるわけでありますけれども、未判定外来生物が生態系等に及ぼす被害の有無については、主務大臣が専門家の意見などを聞いて判定する、そういうことに考えております。 ただ、判定に当たりましては、専門家による外国文献の収集、分析、あるいは海外の専門家との意見交換、あるいはパブリックコメント手続、それから輸入規制に係るWTOに基づく通報手続、そういったものなどに要する時間が必要になるわけでありますが、これらにかかる時間などを考慮しても、六カ月間ぐらいが適切な判定を行うために妥当な期間であろうというふうに考えておりまして、機敏な対応という観点からもこの期間で積極的に対応を図っていこう、こういった考え方になっているわけでございます。 ○田島(一)委員 その六カ月という期間の中で危険性が証明できない場合、そういう外来生物については輸入を認めるというようなことにでもなろうものなら、今後大きな問題を引き起こすのではないかというふうに私どもは考えます。 参議院の議論を見ていても、多分これは何度やっても同じような結論になろうかというふうにも思いますが、ただ、本当にこの六カ月というのが逆に足かせになって、慌てて輸入を認めてしまったというようなことで問題が引き起こったときは、環境省が責任をとるというふうに私どもは理解をしてよろしいでしょうか。 ○加藤副大臣 そのとおりでございます。 十分そういった面については機敏に対応すると同時に、慎重な議論も踏まえながら考えていかなければいけない、このように考えております。 ○田島(一)委員 わかりました。 続きまして、重要管理地域の指定についてお尋ねをしたいと思います。 中環審の答申の中で、「外来種対策に関する措置の在り方」の「制度化に当たり検討すべき事項」の中には、生物多様性の保全上の重要な管理地域に関しては別途特別な外来種対策が必要というふうに記述をされています。しかし、本法案においては、この重要管理地域の指定及び当該地域における外来種対策を講ずるための施策というものは残念ながら見送られてしまいました。 どうして見送られたのか、その理由をお聞かせいただきたいのと、あわせて、固有種それから希少種が数多く生息し、生物多様性保全上の重要な地域、例えば小笠原諸島であるとか南西諸島、そういった地域における外来種対策について、具体的に政府はどのような方策を講じられるのか、お答え願います。 ○小野寺政府参考人 今回の外来種法は、外国から入ってくるものを専ら取り締まるということを目的にするというのが考え方であります。その上で、国内移動のものについては既存の保護法制度、具体的には自然公園法とか鳥獣保護法になりますが、その中で対応が可能だし、場合によっては充実強化をして対応することが法制度上合理的であるという判断に立ったというふうに考えております。 次に、特定外来生物、未判定外来生物の輸入規制についてお尋ねをしたいと思います。本法案の最大の問題点というふうにも私どもは考えておりますので、参議院での議論もございましたが、改めて確認の意味でお尋ねをいたします。 この輸入規制は、外来生物を幅広く指定することで、外来生物の輸入が限られるホワイトリスト方式に近い運用が可能ではありますけれども、一方では、特定外来生物及び未判定外来生物を限定して指定することで、指定されない外来生物が自由に輸入されてしまう、いわばブラック方式にも運用が可能であります。 四月八日の参議院の環境委員会で副大臣が、未判定外来生物は、「特定外来生物と生態的特性が比較的似ている生物の中から、生態系等に被害を及ぼす疑いのある生物を一定のグループごとに選定することを想定している」と答弁をされています。 つまり、特定外来生物と似た生物グループにいわば限定して輸入を規制することであり、よくわからない未知の外来生物にむしろ通行手形を公に発行してしまうような、そんな法律として運用される危険があるやに感じております。 こうしたブラックリスト方式による運用で、外来生物を規制する法律どころか、逆に未知の外来野生生物輸入促進法として誤った方向へ進む危険性があるのではないかというふうに感じますが、大臣、どのように御理解していらっしゃいますか。 ○小池国務大臣 その御懸念はないと思います。 まず、いわゆるホワイトリスト方式でございますけれども、生態系に影響がないということが明らかな生物をまず指定する、これ以外の生物の輸入などは原則認めない、こういう方式でございます。 この法案でございますが、生態系などに被害を及ぼすか、または及ぼすおそれがあるという外来生物を特定外来生物として定めて、そして、特定外来生物と生態系が似ているグループに属します外来生物について、未判定外来生物としてその種属であるとか科などの単位で指定をして輸入制限を行うこととしているわけでございます。 つまり、この法案におきましては、生態系などに対する影響があるもの、あるいはそのおそれのあるものについては、幅広くかつ迅速に規制の対象とすることが可能な仕組みである、このように考えております。 ○田島(一)委員 先日の岩槻参考人が、ブラックリスト方式による運用を一概には否定できないといったような趣旨の発言もございました。本当に、解釈一つではこれはちょっとやばいんじゃないかなと私どもは思っております。 五年後に見直すなんてこともお考えなのかもしれませんけれども、この幅広い運用についてのコメント、たしか十五日、小野寺局長も答弁で、「グレーの種については運用上広く特定、未判定を取ることによって基本的には回避されるというのが我々の考え」だというようなコメントをなさっていらっしゃいます。その一方では、先ほど副大臣の御答弁も引用したんですけれども、一体どれが政府の方針なのか、非常にあいまいに感じてしまうわけであります。 参議院での答弁を見ていると、それぞれの方のおっしゃっていることが随分温度差があるように思うんですけれども、もう一度きちっと整理をできる御答弁をいただけないでしょうか。 ○小池国務大臣 今御答弁させていただいたのが最終的な答弁でございまして、衆参のそれぞれの答弁の違いというのは、時間軸のとらえ方であって、何ら変わるものではないと考えています。 ○田島(一)委員 この議論をずっとやっていたら、あと一時間ぐらいあっても足りないと思うんですけれども、わかりました、今大臣がおっしゃったことが基本だというふうに御理解をさせていただいて、この先進めていきます。 次に、輸入者に対するリスク評価の部分なんですけれども、未判定外来生物を輸入しようとする者は、種類その他の事項を届けることになっております。みずからの責任において生態系等の被害に係るリスク評価資料を提出するということには残念ながらなっておりません。 遺伝子組み換えの生物等の規制による生物の多様性の確保に関する法律では、開発者または輸入者等に生態系影響評価表というものを作成し、主務大臣の承認を受ける義務というものが課せられております。なぜこの法案ではリスク評価に伴う資料の提出というものを義務づけられなかったのでしょうか。 例えば、申請に伴う手続処理の費用、何よりも審査の費用など、どうして国が負担をしなければならないのか。一部の輸入者の経済活動のために国がそれを肩がわりするというのは何かおかしいというふうに私どもは考えるんですが、いかがでしょうか。先日の吉田参考人の御意見等も踏まえて御答弁をいただけたらと思います。 ○加藤副大臣 これは、未判定外来生物を輸入しようとする者に対しては、本法案に基づく届け出手続の中で、未判定外来生物の種類に関する情報のほか、その生態特性に関する情報などを提供することを考えているわけであります。ですから、輸入者にも一定の負担を課すということになるというふうに我々はとらえているわけでございます。 しかしながら、その生態系等に係る被害防止を図るのは一義的には国の役割でありますし、未判定外来生物が生態系等に係る被害を及ぼすおそれがあるか否かは、やはり専門性あるいは公平性の観点から主務大臣が判断すべきものと考えているわけでございます。 ですから、提出する方々がみずから評価したアワスメントのような形になってはいけないということも考えながら、そういう懸念を排除することに基づいて考えている部分もございますので、こういった面についての御理解もぜひいただきたいと思います。 ○田島(一)委員 先日の参考人の意見をお聞きした中では、吉田参考人が、ニュージーランドでは三十万円という申請費用を取っているということを御紹介いただきました。このことによって、ニュージーランドでは外来生物の輸入の試みが、輸入が随分激減したというふうにも聞いております。 果たしてこの日本で三十万円という費用が適当かどうかは議論が必要なところかもしれませんが、それなりにこの申請者に対して費用負担を課すことによって、実質的な防除効果もしくは輸入に対するハードルというものを設定することによってかなり効果が期待できるのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。 ○加藤副大臣 今申し上げましたように、そういう情報等に関してあらゆる努力して、最大限努力していただいて関連の情報を出すこと、それ自体が私たちは費用というふうに考えているわけでございますので、改めてこういった点についての御理解をぜひいただきたいと思います。 ○田島(一)委員 輸入業者がどれだけの情報収集ができるか、学者等でもなかなかわからないようなものを本当に情報収集として行い、また提出できるのかどうか、それは本当に甚だ疑問でもあります。水かけ論になりそうなので、今の質問についてはもうこの程度にとどめさせていただきたいと思います。 次に、新たな科学的知見の充実が図られた場合の対応についてお伺いをしたいと思います。 輸入が許可された日以降における新たな科学的知見の充実等により、生態系等に被害をもたらすことが明らかになった場合、その輸入、飼養等の中止を命じるということ、私はこれが適当だというふうに思うんですけれども、いかがお考えですか。 ○小野寺政府参考人 考え方としては、明らかになった段階で特定外来生物のリストに載せる、それをできるだけ速やかにやるということだと思います。 ○田島(一)委員 リストに載せるということは、輸入とかはもう中止の命令を下すというふうに理解してよろしいでしょうか。 ○小野寺政府参考人 時間的な問題があります。手続を経なければいけませんので、にわかに発効できるということにはならないと思いますが、できるだけ速やかに規制が及ぶようにするということです。 ○田島(一)委員 その規制というのが輸入、飼養の中止だというふうに理解をさせていただきます。 では次に、特定外来生物の防除につきましてお尋ねをしたいと思います。 防除を行うに当たっては、中環審の答申でも記述されているように、関係行政機関、専門家、そして利害関係者等、それからまた地域の関係者の合意形成を図る仕組みが必要だというふうに思います。 政府は、この防除に関してどのような合意形成を図られようというふうに考えているのか。大臣は、関係都道府県の意見を聞いて、対象となる特定外来生物の種類、それから防除を行う区域、期間、それから防除の内容等を定めて公示しなければならないというふうに規定されていますけれども、政府のこの合意形成に係るお考え方をお聞かせください。 ○小池国務大臣 合意形成については大変重要だというふうに認識をいたしておりまして、実施状況のモニタリング、そして関係者間の合意形成、これについて可能な限り実施する方向で今後検討していきたいと思っておりますし、また、その旨については基本方針に盛り込んでいく考えであります。 ○田島(一)委員 やはり現場の声というものが一番大きな指標になろうかというふうに思います。どうぞその辺、漏れであるとか抜かり等がないように、しっかりとした基本方針をお酌み取りいただくように御配慮いただきたいというふうに思います。 次に、先ほども質問にも上がっておりましたけれども、特定外来生物指定前からの飼養の外来生物の取り扱いについてお尋ねをしたいと思います。 本法律案は、公布の日から一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するということになっております。施行前から特定外来生物をペットとして飼養している者は、指定前に当該生物を遺棄、放出する可能性が想定されます。例えばカミツキガメであるとかアライグマなどは、個体登録が行われる前に野外に放つ人がふえるのではないかというふうに危惧しております。 本法律が通ったがゆえに、逆に国内で飼われていた外来生物が一挙に放出され、かえって我が国の生態系が攪乱される可能性すらあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。例えばニュージーランドで、あらかじめ受け入れ先としてのシェルターを用意するとか、そういった受け入れ体制を事前に整備して臨むべきだというふうに思うんですけれども、この点についてどのようにお考えでしょうか。 ○小野寺政府参考人 既に飼っているペットが特定外来生物に指定された場合には、そのような問題が非常に危惧されるところであります。 したがって、一定の施設、管理が可能な者については許可をするということにしたいというふうに考えていますが、一方で、御指摘のような懸念も考えられるところであります。 あわせて、同時並行的でありますけれども、国が、そうなったらもう飼い切れない、そんな立派な施設をつくれないというような人に対しては、あっせんのためのネットワークをつくるなり、直接紹介をするなりということもあわせて検討したいと思っております。 ○田島(一)委員 この罰金額だとかを見たときに、恐らく飼っている人たちはもうびびっちゃって、絶対に逃がすというふうに私たちは想像するんです。そうなってからでは手おくれなんですよね。逆に、外来生物の被害を防止しようという法律だったのが、それを助長することにもなりかねない。そこのところの対策をしっかり立てておかないと、本当にとんでもないことになると思いますよ。 例えば、どういう形で広報活動をしていくのか、もしくは飼い主の放出に対して何をしなきゃいけないのか。例えば、飼い主の方々がどうして逃がすのかというその原点にやはりもう一度立ち返らなきゃいけないと思うんですね。自分がずっとかわいがっていた動物、だけれども、とてもじゃないけれどももうこれ以上飼えない。では、どうすればいいか。 アメリカなんかでは、自分の目の前で飼い犬をずどんと撃っちゃって処分して、それで引っ越しをしていったりしている現状があるわけですよね。でも、日本人にそのようなことはさせるわけにもいかないし、できないでしょう。だから、自分の力で生きろよといって、みんな逃がしていくんですよ。だから、今こうやって被害がどんどんどんどん大きくなってきている。 ということは、そういったシェルター等でしっかりとした体制を整え、そして、苦痛を伴わない殺し方をするんですよということを、より多くのペットの飼い主とかに広報していかなきゃいけないと思うんですけれども、そういうことも踏まえて体制を整えていかないと、この法施行間際で一斉に逃がし出すということは本当に心配されると思うんですが、もう少しその辺に対して誠意あるお答えをいただけませんでしょうか。 ○小野寺政府参考人 動物、野生生物保護、ペットの扱いというのは、先生がおっしゃったように非常に人間の感性そのもの、あるいは文化と非常に深くかかわっている部分があって、我々のように自然保護をずっとやってきた人間からいいますと、特に鳥獣野性生物に関して言うと、科学的な判断をするということと、情緒的にかわいいのでちょっと目の前で殺したりなんかするのは嫌だということが、実はかなり大きな混乱の原因になっている面があるというふうに思います。 かわいいということは素直でありますし、そこは大事にすべき人間の感性だというふうに思いますが、それが実際に、もうちょっとリアルな調整を現場が行う場合には、しばしば合理的な判断ができない結果になってきたということも一面で否定できないんだと思うんですね。 そういうことをあわせて考えていく中で、我々が考えております科学的、かつ、この辺がまあ行政というか、つらくてもやらなきゃいけないことだよということは、一方でしっかり説明しながら、ただ同時に、先ほどの御質問にもあったように、あっせんのためのネットワークなり仕組みなりというのを、行政としてはその責任の中で検討してつくっていくということが重要だと思っております。 ○田島(一)委員 あっせんの仕組み、ネットワークとおっしゃいましたけれども、あっせんというのは、受け入れる人があって初めて、その取引といいますか、移動が可能になるかと思うんですね。では、その受け入れ先というのが本当にあるのかどうか。例えば、カミツキガメなんて、どこの動物園だってもう受け入れられませんと言っているんですよね。にもかかわらず、カミツキガメをまだ飼っている人がいるんですよ。では、その人が逃がしたら、一体どこにあっせんするんですか。 そのあっせん先が全くないような状況、もう飽和状態の中で、それにもかかわらずあっせんします、そのネットワークをつくりますといっても、これはどう考えたって限界があるような気がするんですけれども、もう一度、そのあっせんとおっしゃるその先のことをお答えください。 ○小野寺政府参考人 必要に応じて殺処分ということも考える必要があると思いますし、動物愛護なりの考え方からしますと、できるだけそういうことにならないように、欲しい方と、逃がしたい、管理できないという人がいれば、その間をむしろ国なり行政が前面に出てお世話をするというのが基本的な考え方ではないかと思います。 ○田島(一)委員 わかりました。 やはり一時保護的なシェルターというものを一定用意しておかないと、なかなかそのタイムラグを埋めることは非常に難しいかと思います。どうぞその辺については、この先問題が必ず起こってくると私は予想しておりますので、そういうことのないようにくれぐれも十分な対策をしてください。 次に、地方公共団体等に対する防除費用等の補助についてお尋ねをしたいと思います。 防除を行うには、事前の調査も含めて相当な経費が必要になろうかというふうに思います。本法案においても、防除費用を担保する予算措置というものが十分に講じられているのかどうか甚だ疑問であります。 平成十六年度の予算の中でも、移入生物対策費として計上されているのはわずか一億三千二百万円であります。政府主導で防除を行うこの予算額で果たして十分な予算措置が講じられるというふうに言えるのかどうか。私は、とてもじゃないけれども足りないというふうに思います。 地方公共団体においても、特定外来生物の防除を行うには国からの経費の補助が必要で、NPO等が防除を行うについても、それはもう費用的なことから考えたら非常に困難なことであります。国内の生態系の被害の防止は広域行政でやらなければならないものでもありますし、国が責任を持って防除計画というものを策定し、必要な経費を負担しつつ、地域の実情というものをしっかりと見て、都道府県が防除の実施を行うのが何よりも適当だというふうに思うわけですけれども、どのようにお考えでしょうか。 ○小池国務大臣 防除の費用、地方公共団体に対してはいわゆる補助ということになるんでしょうか、要望があることはよく認識をいたしております。 また、政府の方も、人員、予算についても適切な増員、増額が必要かと考えております。一億三千万というのがその前は八千万だったわけでございまして、ぜひ、予算のシーズン、与野党の皆様方、大いにこの点でも御支援をいただきたい、このように思っているところでございます。 ○田島(一)委員 私、先日、奄美へお邪魔をしてマングースの駆除の現場を見てまいりました。関係者が一様におっしゃるのは、もう予算がないということばかりであります。おおよそ概算的なんですけれども、奄美大島でマングースを完全に駆除するためには、恐らくこの先十四、五年はかかるだろうというふうに専門の方からも意見を聞きました。では、十四、五年間、一年間ぐらいで大体幾らぐらいかかるんだろうかねというような話をしましたら、二億円ぐらいは必要でしょうねというお話であります。十五年間掛ける二億円、これだけの予算を確保しなければ、この法律は全くざる法にしかならないということを私は痛切に思いました。 この予算を確保する自信と覚悟がおありかどうか、大臣、もう一度覚悟のほどをお聞かせください。 ○小池国務大臣 ぜひとも、野党の皆様も御支援いただきたいと思います。 ○田島(一)委員 私どもは精いっぱい応援しますよ。大臣としての覚悟を聞いているんですよ。その辺をお聞かせください。 ○小池国務大臣 ぜひとも、皆さんの御支援を得て頑張りたいと思います。 ○田島(一)委員 頑張りましょう。やはり、大臣としての自覚をもうこれ以上にお願いすることはございません。 ○田島(一)委員 次に、他の動植物関係法令の罰則との整合性についてお尋ねをしたいと思います。 本法案の三十二条において、許可なく特定外来生物の飼養等をした者や主務大臣の措置命令に違反した者は、三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金、また、法人の代表者または法人の違反行為については一億円以下の罰金を科すということ、これは、これまでの動物関係法令の罰則より随分高く設定をされました。 一方、種の保存法における希少野生動植物の譲渡などの規制違反や国内希少野生動植物種の個体等の輸出入規制違反に対する罰則、これはいずれも一年以下の懲役または百万円以下の罰金であり、もう一つ、鳥獣保護法においては、輸入規制違反に対しては一年以下の懲役または百万円以下の罰金というふうに非常に軽くなっております。動物愛護法に至っては、愛護動物を遺棄したら、わずか三十万円以下の罰金に処されるのみというふうになっております。 余りにもこの罰則の差があろうかというふうに思うんですけれども、この他の動物関係法令等についても、本法律案と同等の処罰内容を検討しなければならないというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。 ○小野寺政府参考人 外来種法の罰則は、これまでの自然保護関係の法制度の中では相当強いものであるというふうに、案をつくった我々も感じております。 御指摘のその他の法令についてどうするかというのは、実は、法律が何を目的として、効果が、社会的利益が何が得られるかということとの関係の中ですので、一概に、どの法律も一律横並びで、外来種法が突破口を開いたのでこのレベルに合わせるということを申し上げるのは適当ではないと思いますけれども、おおむねその方向で、厳しい方向に推移するのではないかというふうに考えております。 ○田島(一)委員 御苦労いただいた御答弁でありましたけれども、法律によってその罰則の差がこれだけ大きく開いてくると、当然抜け道みたいなものを探る悪徳業者、悪徳者みたいなものが出てくる可能性がやはりあります。罰則を強化すればすべて事が片づくとは当然私も思っておりませんが、関係法令で大きくこの差がつこうとしているこの状況をどうぞ十分に勘案していただいて、他の法令、法律の罰則内容の見直しに着手していただきたいと思いますが、再度、確認の答弁をお願いします。 ○小野寺政府参考人 先ほど申し上げました法律の目的、それによって得られる社会的利益を勘案して、今後の検討課題とさせていただきます。 (中略) ――――――――――――― ○小沢委員長 これより討論に入ります。 討論の申し出がありますので、これを許します。田島一成君。 ○田島(一)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提案の特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法案に対する反対の討論を行います。 外来生物問題が深刻さを増し、実効性ある対策を図ることが喫緊の課題となっております。私ども民主党は、昨年十月、参議院に民主党独自の外来種法案を提出し、さらに、今国会、内容に精査を加え、実効性ある法案を再提出いたしました。 しかるに、政府が提出した本法案ですが、私ども民主党は、参議院での審議、本院及び当委員会でも、多くの問題点を指摘してまいりました。 以下、政府提案の本法案に反対する理由について申し述べたいと思います。 反対理由の第一は、本法案における外来生物の定義を海外から持ち込まれた外来生物種に限定していることであります。 島嶼や自然保護区など、我が国における生物多様性の保全上重要な地域については、海外から導入された生物種に限定することなく、国内のある地域から自然分布域を越えて導入された生物種についても特定外来種に指定できる制度を整備すべきであります。 例えば、沖縄北部の山原地域においては、ヤンバルクイナがマングースだけでなく飼い主から遺棄されたノネコによっても捕食され、絶滅の危機に瀕しております。マングースを特定外来生物に指定することによって本法案における防除等の対策を講じることができても、ノネコに対しては本法案の仕組みによっては対策を講じることができません。 海外から導入された生物種に限らず、国内の自然分布域を越えて導入された生物種についても特定外来生物として指定できる仕組みを構築するべきであります。 また、これらに関連して、生物多様性の保全上重要な地域においては、重要管理地域をして国内外から生物の持ち込みを禁止する地域を指定できるような制度を整備すべきであります。 第二に、外来種対策は予防原則の観点から水際規制が最も重要であるにもかかわらず、本法案では極めて不十分なものであると言わざるを得ません。 本法案では、生態系等に影響を及ぼすことが明らかな外来生物のみを規制する方法、いわゆるブラックリスト方式に近い考え方を採用しています。輸入しようとする外来生物が生態系等に係る被害を及ぼすかどうか不明である場合には、該当外来生物と生態系等に係る被害の因果関係が科学的に十分立証されていなくても、未然防止の観点から輸入を規制し、国内に導入してもリスクが少ないと判定された生物種以外はすべて規制の対象とする、いわゆるホワイトリスト方式を採用することが未然防止の観点から重要だと思います。 第三に、本法案において、未判定外来生物が生態系等に被害を及ぼすおそれがあるか否かを判定する期間は六カ月以内と限定されています。 北海道や神奈川県におけるアライグマの例からもわかるように、外来生物が導入されて直ちに被害をもたらすよりも、しばらくの期間は潜伏し、実際の被害に気がついたときには既に手おくれとなる、そんな場合も想定されています。 こうしたことから、その判定は慎重に行う必要があり、判定期間を六カ月以内と限定せず、ある程度の判定期間を延長できる仕組みにするなど、柔軟に対応すべき旨を指摘させていただき、私の反対討論を終わらせていただきます。(拍手) ○小沢委員長 以上で討論は終局いたしました。 ――――――――――――― ○小沢委員長 これより採決に入ります。 内閣提出、参議院送付、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕 ○小沢委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 ――――――――――――― ○小沢委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、大野松茂君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。長浜博行君。 ○長浜委員 私は、ただいま議決されました特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、公明党、社会民主党・市民連合及び民主党・無所属クラブを代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。 一 特定外来生物の指定に当たっては、諸外国の知見や学識経験者の意見を参考にして、適切に指定を行うこと。また、被害に係る新たな知見が得られた場合には、特定外来生物への指定を検討すること。 二 特定外来生物の防除の実施に際しては、防除を行う地域における在来生物の混獲等への配慮や危険なわなの使用を避け、在来生物の生態系に影響を及ぼさないよう努めること。 三 海外から輸入される生物の種及び数量の実態把握に努めるとともに、関係府省間の連携に努め、特定外来生物が密輸入されることのないよう、水際対策を強化すること。輸入貨物への付着等によって、非意図的に導入される外来生物について、導入経路及び生育状況の調査並びに監視に努めること。 四 本法実施に係る人員・予算の確保等必要な体制の整備に努めること。 五 政府や自治体が行う緑化等の対策において、外来生物の使用は避けるよう努め、地域個体群の遺伝的攪乱にも十分配慮すること。 六 外来生物対策の必要性について、広報活動、教育活動など様々な手段を用い、国民や動物取扱業者等の関係者に普及啓発・周知を徹底すること。 七 国内由来の外来生物の問題については、自然公園法等の既存法令を活用した規制の強化などを行うこと。 以上であります。 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(拍手) ○小沢委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。 採決いたします。 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕 ○小沢委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。小池環境大臣。 ○小池国務大臣 ただいま御決議ございました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力する所存でございます。 ――――――――――――― ○小沢委員長 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ――――――――――――― 〔報告書は附録に掲載〕 ――――――――――――― ○小沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時二分散会 |
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