特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律 |
■以下、第159回国会 環境委員会会議内容抜粋 |
第14号 平成16年5月25日(火曜日)
――――――――――――― 本日の会議に付した案件 政府参考人出頭要求に関する件 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案(内閣提出第一二五号)(参議院送付) ――――◇――――― ○小沢委員長 これより会議を開きます。 内閣提出、参議院送付、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律案を議題といたします。 この際、お諮りいたします。 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省大臣官房審議官藤原啓司君、農林水産省大臣官房審議官染英昭君、農林水産省大臣官房参事官齊藤登君、水産庁資源管理部長竹谷廣之君、国土交通省道路局長佐藤信秋君、環境省地球環境局長小島敏郎君及び環境省自然環境局長小野寺浩君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ――――――――――――― ○小沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大前繁雄君。 ○大前委員 最初に、防除の問題についてお尋ねしたいと思います。幾つかの自然保護団体、動物愛護団体の方々から意見を聴取しました結果、どうしても気になって、いまだに頭を悩ませている問題が一つございます。それは、防除、いわゆる根絶の問題でございます。 そこで、まずこの件に関して二、三お尋ねしたいと思います。 一つ目は、そもそも一度野に放たれた動物の根絶など不可能なのではないかという意見についてでございます。 ある動物愛護団体が全国の都道府県の鳥獣保護担当者に対して実施した匿名アンケート調査によりますと、ほとんどの人が、一度野に出た動物の根絶など不可能だと回答しているそうでございます。また、我が国では、動物四百万匹、昆虫まで入れると八億匹という膨大な数の生き物が輸入されており、今さら日本固有の生態系に戻すのは不可能ではないかとも言われております。 もしそうであるといたしましたならば、莫大なお金、税金を投入して、たくさんの生き物を殺して、そのあげく根絶という目的を達し得ない、そういうことであれば、結局、国や自治体にとっては税金のむだ遣い、動物にとっては殺され損、むだ死に、得をするのは捕獲業者だけということになるわけでございますが、こういった意見についてどのようにお考えか、まずお尋ねしたいと思います。 ○小野寺政府参考人 一般的に申し上げますと、一たん入った外来種で、かつ国土全体に蔓延しているものを絶滅まで駆除するというのは、そう簡単ではない、難しいと言ってもいいかもしれませんが、かなりの困難が予測されるというのが公平な見方ではないかと思います。 しかしながら、与える影響、被害を考えて、例えばある特定地域、非常に貴重な生態系が存在している地域の中に外来種が入って被害を起こしているという場合には、その被害の程度と駆除に要する費用なりエネルギーの関係で物事を考えるべきだというのが一つあると思いますし、また、全面駆除と、部分的にある程度駆除をして被害を低減するということも考え方の一つとして大事なんじゃないかと思います。 したがって、総体的な中で被害を低減させていく、あるいは中期的な目標を設定してそれに向けて作業を進めていくということが一つあると思いますし、また、外国の事例等を参考にいたしますと、例えば島嶼とか池などの非常に限定的な、まとまりのある生態系の中で駆除に向かって進めていくというのは、やりようによっては可能であると考えております。 ○大前委員 それで、根絶の問題につきましてのもう一つの問題は、道徳、倫理面の問題でございます。 この点について、さきの参考人質疑でも、日本自然保護協会理事の吉田正人参考人が取り上げられまして、合意形成のプロセスの導入が大切だと述べられました。野に出た野生生物の三分の二は人間が捨てたものであると言われており、人間が起こした問題を罪のない動物殺害で解決するのは道徳的、倫理的に問題があり、教育にも悪影響を及ぼすのではないか、そういった懸念がございますけれども、こういった点についてどのように説明づけをされるのか、お尋ねしたいと思います。 ○砂田大臣政務官 人間何千年の歴史の中で、動植物が、それぞれの人間とのしのぎ合いの中で、長年殺したり殺されたりということが続いてまいったわけでございます。しかし、現代、やはり自然の環境を守るという意味からも、動植物について、人間がそれなりに人間の立場として大事にしていかなきゃならないものというものは存在をしているわけでございます。 既に蔓延している特定外来生物、そういう膨大な数に上っている現在でございます。これらすべてを生かして管理をするということは、まことにしにくい、難しい問題であり、非現実的な問題ではないかというふうに考えているところでございます。殺して処分をする以外に有効な手段がないことがあり得るというふうに考えているわけでございます。その場合でも、殺して処分を行う際には、動物愛護管理法の考え方に沿って、動物に苦痛を与えない適切な方法によって行うよう基本的な方針に明記をする、適切な対処をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。 また、やむを得ず殺して処分をしなければならない必要性や、防除の対象となる外来生物が適正な管理下にある限り失われなかった生命であることなどについて、外来生物対策の普及啓発を進める中で、広く国民の理解を得ていくことが大事ではないかというふうに考えている次第でございます。 (中略) ○大前委員 次に、外来種の輸入、移入規制問題について数点お尋ねしたいと思いますが、最初に、さきの参考人質疑で放送大学教授の岩槻邦男参考人から御説明のございました、生物分類を進めていく上で不可欠な専門家の体制整備の問題でございます。 現在、随分と体制整備がおくれているという岩槻先生の御指摘でございましたけれども、この点、その促進策について環境省のお考えをお聞きしたいと思います。 ○加藤副大臣 今の質問の内容は、私も極めて重要だと思ってございます。生態系への影響に迅速に対応するためには、やはり自然環境にかかわる基礎的なデータをどれだけ把握しているかということが出発点になるわけでありますので、特に今御指摘のありました生物の分類あるいはそのリスト、こうした対策というものはやはり対策の基礎である、そういうふうに認識しているわけでありまして、環境省も、これまで自然環境保全基礎調査、こういった調査やレッドデータブックの作成等を通じまして、専門家の協力を得まして動植物の分類リストの作成に努力してきているところでございます。 生物の数は非常に膨大であるが、先ほど説明の中にもございましたけれども、今後とも、各分野の専門家の協力を得ながら、これらのリストをさらに充実させてまいりたいということになるわけでありますけれども、御指摘の専門家の体制整備、おっしゃるとおり心もとない状態でございます。たしか、岩槻先生もそのようにおっしゃっておりまして、イギリスを代表するロンドンの植物園では学位級の研究者が百人いる、日本の東大の植物園では教官が六人しかいない、そういう寒い状態でございますので、こういった面については、人材供給についても積極的に考えていかなければいけない。 先ほど述べましたようなさまざまな取り組みを積み重ねると同時に、やはりそういう人材育成にもつながることを考えていかなければならないわけでありますし、あるいは文部科学省そのほか関係省庁とも必要に応じてこういった面について充実を働きかけてまいりたい、こう思ってございます。 また、OECDなんかでも、地球規模の生物多様性情報機構という世界的な規模の機構を立ち上げた段階でございますので、そういったところとも生物分類にかかわる情報について共有できるように、積極的な対応を考えていきたい、このように考えている次第でございます。 (中略) ○大前委員 この件については、大臣にしっかりとやっていっていただきたいと思います。 最後に、国民の大変関心の深いペット関連の問題について一点だけお聞きしたいんですが、特定外来生物に指定される前からペットとして飼養している場合、それが特定外来生物として指定された場合、取り扱いがどのようになるのか、飼養等が認められなくなるのかどうか、この点だけちょっとお聞きしたいと思います。 ○小野寺政府参考人 御指摘のように、ペットの特定外来生物の飼養は原則認めないというのが法律の考え方です。ただし、法律が施行されたときに既に例えば愛玩動物として飼っている場合には、学術研究機関で特定外来種を飼うのを許可する場合に、ちゃんとした施設をつくって、逃げ出す危険がない条件が整ったものについては許可するということにしておりますので、その並びで、既に飼っていて、そういう施設など逸出する条件がないものについては認めることも考えるべきだ、こういうふうに思っております。 ○大前委員 ペット関連の問題については、国民の関心が非常に高いようでございますので、水際対策と同時に、そういった広報、周知の徹底について努力をしていただきたいと思います。 この法案は、我が国で初めての法案でございますけれども、未解明な点、試行錯誤的な面も多々あるように散見されます。環境権に関する規定を憲法に明記する議論がなされております昨今、外来種問題は、本法案の成立ですべて解決するものではないと思われます。この法案を第一歩として、国民に理解が得られますよう、問題と対策の普及啓発、周知を広げて、今後、二歩も三歩も進んだ法案にしていただくよう強く要望しまして、私の質問を終わります。 ○小沢委員長 次に、鮫島宗明君。 ○鮫島委員 民主党の鮫島宗明です。 昭和五十年、一九七五年の十月一日から一九八〇年の三月三十一日まで、私は、石垣島にあります熱帯農業研究センター沖縄支所の導入研究室というところにいて、四年半の間に、アフリカのサバンナの草等々六百種ほどの外来種を導入して評価する仕事に携わっていたものですから、そういう加害者としての反省も込めて、きょうはやや自爆テロ的な質問をさせていただきたいというふうに思います。 この前も参考人で、東大の植物園の先生もキュー・ガーデンの話をちょっとおっしゃっていましたけれども、この生物多様性条約が生まれる背景には、古典的な植民地時代のアングロ・サクロンの考え方、つまり、新しい大陸を発見したら、そこで使えそうな貴重な動植物は全部本国に持ち帰って保管して、これで一応遺伝資源は保存できた、あとは自由に開発しろというので一気呵成に開発してしまうというのが従来の植民地型の自然管理、全部、オイルパームの畑にしちゃったりゴム園にしちゃったりと。 ところが、そういう貴重種だけをキュー・ガーデンのようなところで細々と維持管理していても、それは本当の意味の遺伝資源全体の保全につながらないということがだんだん問題になってきて、野生種でも何でもいいんですが、ある種の存在している生態系そのものを自然のままで保全しないと、周辺の関連する亜種とか何かも含めてなかなか保全できないという考え方から生物多様性条約ができ、そして、なるべく自然をあるがままにそっとしておきましょうという保全の仕方というふうに考え方として変わってきて、それに沿って国内法を整備していく、その流れできょうという日もあるというふうに私は認識しています。 確かに、例えば佐渡のトキにしても、もう数羽になってからトキセンターに持ってきて、いいえさをやって、それ、頑張って、もう一息といっても、なかなか子孫はできない。やはりトキが生息する無農薬の田んぼがあり、ドジョウがいてタニシがいて、横にうっそうとした森があり、この生態系そのものを保全しないとなかなか種の保存はできないんだという考え方がきょうの法律の背景にあるということをまず確認しておきたいと思います。 順番でいきますが、この前私は間違えて、環境レポートのときは、我が党は反対するのかと思って質問しちゃったんですが、きょうも何だかよくわからなくて、ちょっと私が疑問に思うことを全部聞いていくことにします。 特定外来生物の定義を簡単にわかりやすくお願いしたいんです。 ○小野寺政府参考人 法律上、生物全般が対象になりますというのが法律のまず一番大きな概念であります。 中央環境審議会で一年ほど、昨年の秋に答申が出たわけですが、その中では、明治以降に外国から入ってきたものを外来生物ととりあえず整理しようということにしております。その理由は、分類そのものが、明治以降、我が国及び外国において進んできたということが一つでありますし、我が国においていいますと、明治以降、飛躍的に人流、物流の量が拡大したということで、明治以降というふうに考えているところであります。 ○鮫島委員 私が聞いている範囲では、明治以降、人間が意図的に、人為によって運び込まれたものというふうに聞いているんですが、それはそれでいいんでしょうか。 ○小野寺政府参考人 そこはちょっとわかりにくいんですが、明治以降入ってきたものについては意図、非意図にかかわらず今回の法律の対象になります。 ○鮫島委員 そうすると、意図したかしないかにはかかわらず、明治以降に日本に入ってきて定着または利用されているものというのが外来生物、その中で、生態系に悪影響を及ぼすか、農業に悪影響を及ぼすか、人間の健康に悪影響を及ぼすか、その三つの観点から見てどうもよろしくないというのが特定というふうに分類されるということだと思いますが、では、今の定義からいうと、国内由来の外来種、例えば家猫が奄美大島で悪さをしているとか、国内由来のものは、つまり、移入といいますか、それはこの定義では入らないのか。 ○小野寺政府参考人 今回の法律では入りません。 ○鮫島委員 特定外来生物のイメージをもうちょっと具体的にしていく意味で、では、今、奄美なんかで問題になっているマングースは当然特定外来生物に入るんでしょうね。 ○小野寺政府参考人 マングースは対象として考えております。 ○鮫島委員 アメリカザリガニはどうでしょうか。 ○小野寺政府参考人 対象だと思います。 ○鮫島委員 これから専門家で検討して絞って決めていくということだと思いますが、私は、今から入れるものについて評価するのももちろん大事ですが、今既に入っちゃっているもの、明治以降、数千種ぐらい入っているんじゃないかと思いますが、とにかくいろいろなものが入っていて、それについても、明治以降海外から入ったものについては特定外来生物か非特定かという分類は当然するんですよね。 ○小野寺政府参考人 専門家を集めた中央環境審議会の小委員会で一年ほど検討した結果では、それらのことを勘案して、ほぼ二千種が当面の対象の母体だというふうに考えております。 ○鮫島委員 そうすると、当面の対象になる二千種というのはいわゆる特定外来生物かそれ以外かを判定する対象という意味ですね。 ○小野寺政府参考人 とりあえず、去年の秋の答申の段階では二千というふうに申し上げました。したがって、それを特定外来生物、これは政令でするわけですし、未判定生物というのは省令でやるつもりですけれども、それが二千種を超える範囲になるのかどうかというのは専門家と議論しながら決めたいというふうに考えております。 ○鮫島委員 約二千種程度が明治以降日本に持ち込まれてさまざまな使われ方をしている、中には生態系に悪影響を及ぼしているかもしれないものがある、こういうのが判定の対象になってこれから検討が行われるわけです。 |
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